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2人で静かな昼食を取った後、何か話したほうがいいのかと思い、声をかけてみた。
「あの、今井さん」
「はい?」
「コーヒー飲みますか?私、淹れますよ」
「あ、じゃあ、お願いします」
コクンと頷き、椅子から立ち上がった。
う~ん、私ってやっぱり、親しくなったり友達作るの下手なのかな。
打ち解けるって、どうやったら出来るんだろう。
「坂本さん」
しかも、異性に。
龍くんや晋くんとはどうやって仲良くなったんだっけ?
「…あの、坂本さん?」
2人の場合、向こうからどんどん来てくれたんだったっけか。
ん~、参考にならないなぁ。
考え事で頭をいっぱいにしていると、いきなり肩をトントンと叩かれた。
「…え!?」
振り向くと、今井さんがとても不思議そうに私を見つめて立っている。
「あの、坂本さん?大丈夫?」
「え!?坂本!?」
呼び慣れてない名字に、目を見開いてしまった。
あ、やばっ!私ってば、また何口走ってるの?今は『坂本』でしょ!
慌てて口を手で抑える。
「あれ?…えっと…、さっきから呼んでるんですけど…?」
「あ、ああ!ごめんなさい!あ、違うの!私、あまり坂本って呼ばれ慣れてなくて…。あ、っていうか、ほら、皆下の名前で呼んでくれてるからさ」
なぜかしどろもどろに話ていると、今井さんがクスクス笑ってきた。
あら。今井さんってば、とてもいい笑顔するんじゃん。
「俺もどちらかと言ったら下で呼ばれることが多いかも」
お!もしかして?これは親しくなるチャンスじゃない?
「そうなんだ!じゃあ、私も健くんって呼んでいいですか?」
「え?あ、はい!」
やったぁ!
「それじゃ健くんも、私のこと好きに呼んでいいですからね!」
「いえ、それは…。一応俺より先にここで働いてる先輩ですから」
…真面目だなぁ。
「気にしなくていいですって!健くんのほうが歳上だし、パティシエなんですから。敬語で話さなくてもいいですよ」
そしてニッコリ笑って見せた。
「…そうかな?…それじゃ、俺も柚ちゃんって呼んで大丈夫?」
優しく問いかけてくれる健くんに、私は笑顔で何度も頷いていた。
よかったぁ。これで少しは親しくなれるかなぁ。
友達が増えていくのって、なんかうれしいな。
そして休憩を終えた私たちは、再び仕事へと戻っていった。
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