第5話

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2人で静かな昼食を取った後、何か話したほうがいいのかと思い、声をかけてみた。 「あの、今井さん」 「はい?」 「コーヒー飲みますか?私、淹れますよ」 「あ、じゃあ、お願いします」 コクンと頷き、椅子から立ち上がった。 う~ん、私ってやっぱり、親しくなったり友達作るの下手なのかな。 打ち解けるって、どうやったら出来るんだろう。 「坂本さん」 しかも、異性に。 龍くんや晋くんとはどうやって仲良くなったんだっけ? 「…あの、坂本さん?」 2人の場合、向こうからどんどん来てくれたんだったっけか。 ん~、参考にならないなぁ。 考え事で頭をいっぱいにしていると、いきなり肩をトントンと叩かれた。 「…え!?」 振り向くと、今井さんがとても不思議そうに私を見つめて立っている。 「あの、坂本さん?大丈夫?」 「え!?坂本!?」 呼び慣れてない名字に、目を見開いてしまった。 あ、やばっ!私ってば、また何口走ってるの?今は『坂本』でしょ! 慌てて口を手で抑える。 「あれ?…えっと…、さっきから呼んでるんですけど…?」 「あ、ああ!ごめんなさい!あ、違うの!私、あまり坂本って呼ばれ慣れてなくて…。あ、っていうか、ほら、皆下の名前で呼んでくれてるからさ」 なぜかしどろもどろに話ていると、今井さんがクスクス笑ってきた。 あら。今井さんってば、とてもいい笑顔するんじゃん。 「俺もどちらかと言ったら下で呼ばれることが多いかも」 お!もしかして?これは親しくなるチャンスじゃない? 「そうなんだ!じゃあ、私も健くんって呼んでいいですか?」 「え?あ、はい!」 やったぁ! 「それじゃ健くんも、私のこと好きに呼んでいいですからね!」 「いえ、それは…。一応俺より先にここで働いてる先輩ですから」 …真面目だなぁ。 「気にしなくていいですって!健くんのほうが歳上だし、パティシエなんですから。敬語で話さなくてもいいですよ」 そしてニッコリ笑って見せた。 「…そうかな?…それじゃ、俺も柚ちゃんって呼んで大丈夫?」 優しく問いかけてくれる健くんに、私は笑顔で何度も頷いていた。 よかったぁ。これで少しは親しくなれるかなぁ。 友達が増えていくのって、なんかうれしいな。 そして休憩を終えた私たちは、再び仕事へと戻っていった。
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