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座らないのか?的な表情に、私はハッとした。
どこに座ってもいいものなのか悩みながらも、すかさず隣へ。
落ち着かずにいると、恭が声かけてきた。
「映画なんて、かなり久しぶりだな」
「そ、そうなんですか!?」
挙動不審に答える私を、片眉上げて見つめてくる。
「お前、もしかして、…初めて?」
アハハと苦笑いしては、コクンと頷いた。
するとしばらく私を見つめて瞬きを繰り返し、ボソッと呟く。
「それ、ある意味すごいよ」
「…そうでしょうか」
頬を染めていると、恭がクスクス笑う。
「柚花は初めてだらけだな。…まぁ、俺よりたいぶ下だし、初めてが多くてもしょうがないんだろうけど」
そう言ってくれる恭に、どこかホッとしていた。
そして、照れながら返していく。
「確かに離れてますよね。13歳差って、やっぱり世間から見たら離れすぎかな?恭もそう思ったりする?」
「さぁ、俺は別にそんな…に……?」
天を仰ぎながら呟いていた恭は、言葉を途中で詰まらせながら、私へ振り向いてきた。
「柚花、…今、何て言った?」
「…へ?」
「13歳差?」
「………あ!?……あれ!?」
私は目を大きくして、その場におもいっきり固まってしまった。
ちょ、ちょっと待った。
私、今19じゃないでしょ!に、21でしょ!?
「おい!?…お前、まさか…」
「ち、違うんです!計算間違えしちゃったみたい。あの、11歳差ですよねぇ!アハハ…」
身振り手振り、なんとか誤魔化そうと試みるけど、恭の瞳は見開いたまま。
そしてすぐ、私の右手首をギュッと握り締めてきた。
「…お前、19なのか?」
うっ…。ど、どうしよう。
「だから、あの、計算間違いしただけ…」
「柚花」
なんとか言葉を続けようとする私を、恭は真っ直ぐ見つめ、止めに入ってきた。
お互い見つめ合っていると、いきなり明かりがパッと消されていった。
それにビクッと反応したのは私だけなようで。
正面を向くと、スクリーンが映し出され始めていた。
なんとも言えない空気に、ゴクンと息を飲み込む。
すると、私の右手首を握っていた恭の手が、優しく緩んでいった。
それに気づき、再び視線を恭へ。
スクリーンが明るさを放つ度、恭の顔が反射して見えた。
いまだ私を見つめている。かと思うと、口を開いた。
「映画が終わった後に話そう」
そう言って、恭は私の手首を離し正面へ顔を上げていった。
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