第5話

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座らないのか?的な表情に、私はハッとした。 どこに座ってもいいものなのか悩みながらも、すかさず隣へ。 落ち着かずにいると、恭が声かけてきた。 「映画なんて、かなり久しぶりだな」 「そ、そうなんですか!?」 挙動不審に答える私を、片眉上げて見つめてくる。 「お前、もしかして、…初めて?」 アハハと苦笑いしては、コクンと頷いた。 するとしばらく私を見つめて瞬きを繰り返し、ボソッと呟く。 「それ、ある意味すごいよ」 「…そうでしょうか」 頬を染めていると、恭がクスクス笑う。 「柚花は初めてだらけだな。…まぁ、俺よりたいぶ下だし、初めてが多くてもしょうがないんだろうけど」 そう言ってくれる恭に、どこかホッとしていた。 そして、照れながら返していく。 「確かに離れてますよね。13歳差って、やっぱり世間から見たら離れすぎかな?恭もそう思ったりする?」 「さぁ、俺は別にそんな…に……?」 天を仰ぎながら呟いていた恭は、言葉を途中で詰まらせながら、私へ振り向いてきた。 「柚花、…今、何て言った?」 「…へ?」 「13歳差?」 「………あ!?……あれ!?」 私は目を大きくして、その場におもいっきり固まってしまった。 ちょ、ちょっと待った。 私、今19じゃないでしょ!に、21でしょ!? 「おい!?…お前、まさか…」 「ち、違うんです!計算間違えしちゃったみたい。あの、11歳差ですよねぇ!アハハ…」 身振り手振り、なんとか誤魔化そうと試みるけど、恭の瞳は見開いたまま。 そしてすぐ、私の右手首をギュッと握り締めてきた。 「…お前、19なのか?」 うっ…。ど、どうしよう。 「だから、あの、計算間違いしただけ…」 「柚花」 なんとか言葉を続けようとする私を、恭は真っ直ぐ見つめ、止めに入ってきた。 お互い見つめ合っていると、いきなり明かりがパッと消されていった。 それにビクッと反応したのは私だけなようで。 正面を向くと、スクリーンが映し出され始めていた。 なんとも言えない空気に、ゴクンと息を飲み込む。 すると、私の右手首を握っていた恭の手が、優しく緩んでいった。 それに気づき、再び視線を恭へ。 スクリーンが明るさを放つ度、恭の顔が反射して見えた。 いまだ私を見つめている。かと思うと、口を開いた。 「映画が終わった後に話そう」 そう言って、恭は私の手首を離し正面へ顔を上げていった。
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