第6話

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「でも、そんな自分だったことに気がつけたのは、シャンティで働くようになってからだよ。 前にも話したかもしれないけど、働く意味とか、大変さとか、社会とか常識とか…。シャンティでたくさんのこと教えてもらった。今までなんとも思っていなかった働くことの意味を、そこでの生活が私に教えてくれた。 少しの間だったけど、私が過ごしてきた中であんなに色濃い時間、他にない。 たがら、なおさら思ってる。私、シャンティで働きたい。助けてもらった分、全部恩返ししたい。 たとえ大河内から出て行っても、今までの暮らし全て捨て去っても、どんなにお父さんやお母さんに反対されて怒られても、それでも戻りたいって願ってる」 お父さんは、黙ったまま私を見つめていた。 聞いてくれている、そう感じたのは、初めてだった。 「私、これ以上昇さんとは一緒にやっていけません。愛することの意味も、シャンティで教えてもらったから。 出来ることならシャンティで、恭のそばにいたい。シャンティで働きながら、恭を支えられる人になりたい」 この想いは、願いは、私にとって絶対。 どんなに離されても、辛いことがあっても、今の今まで胸にあり続ける恭への愛は変わらない。 キュッと唇を噛み締めた。 しばらくすると、お父さんは振り返り私に背を向けた。 その背中を見つめ、最後の最後だと声を振り絞る。 「自分の夢を叶えたいと願うことは、いけないことですか?」 涙が静かに頬を伝うと、お父さんの背中が一度大きく上下した。 低い声が、そっと届いてきた。 「…もう、遅い。また後日、もう一度よく考えてから話し合う。その時は、…椿にも声をかけるように」 話の行方を見届けていた坂本にそう声をかけた。 私はそれを聞いて、目を大きくさせていた。 話し合うって、それって…!? お父さんが部屋を出て行こうとするその背中へ、慌てて声をかけた。 「お父さん!」 「…本当に、困った子だ」 「あ…。…あの、…話し合う機会をくれて、…ありがとう」 そう伝えて涙を拭うと、お父さんは再び歩き出した。 その足は止まることなく、ここを後にしたのだった。
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