第6話

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せっかく堪えた涙が簡単に零れてしまいそうで、その場ですぐに瞳を閉じた。 あまりに苦しくて、微かに体が震え出す。 顔を伏せ、込み上げてくる熱い感情をなんとか必死に抑え込もうとした。 息を整え、手に力握った。 本当は、振り返りたい。 恭を見て、駆け寄って、抱き締めたい。 ずっとずっと、そばにいたい。 でもそれは、今は絶対してはいけない。 弱い自分を払い除けるため、唇を噛むことで一喝する。 ゆっくり目を開け、顔を上げた。 真っ直ぐ先を見つめ、大きく息を吸う。 そして、心の中から恭に話しかけた。どうか伝わってと、願いながら。 私、恭が大好き。 誰かを好きになる気持ちを教えてくれてありがとう。 本当は、もっとずっとそばにいたかった。 一緒に、いたかった。 決してこの過ごした短い時間に嘘も偽りもないんだということを、わかってほしい。 大好きだからこそ離れるんだということを、わかってほしい。 それを証明できるように、けじめ、つけてくるから。 足を上げると、私は真っ直ぐシャンティの入り口へと向かった。 止まっていた空気の流れを作り、坂本の横を抜け、ドアに手をかける。 後ろから晋くんや龍くんの声が聞こえたけど、次は足が止まることはなかった。 そして、シャンティから外へ。 外の風が私の顔を撫でた瞬間、一気に瞼から力が抜け、堪えていた涙が頬を伝った。 それでも私は歩き続け、振り返ることはしなかった。 家の者が、車のドアを開けて待っている。 そこへ迷わず乗り込み、シャンティから目を反らしたまま座り込んだ。 すぐに車は走りだし、そこから立ち去ったのだった。
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