第6話

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これからのことを考えなくちゃ。 そう思っているのに、さっき焼き付いたお父さんとお母さんの顔がチラついてくる。 頭が全く働かなかった。 その次には、シャンティの皆のことばかりを浮かばせていた。 今さら、どうなっているかなんて考えたって仕方ないのに。 とめどなく流れる涙がいつ止まったのか、眠りから覚めてもその答えはわからなかった。 瞼は重く腫れて、脱力感が半端ない。 ベッドに横になったまま起き上がれずにいた。 そんなとき、部屋がコンコンとノックされる。 「柚花様。おはようございます」 この声は坂本だ。 私は微動だにせず、聞き流していた。 「お部屋に入ってもよろしいでしょうか」 その問いかけにも無視し続けていると、ガチャッとドアが開くのがわかった。 「ご朝食の準備が出来ております」 坂本の声が近くまでやってきても、お布団から顔を出そうなんて思えなかった。 早く、どこかへ行って。 心の中でそう呟く。 「…昨日は、大変お疲れ様でした。もしお体の調子がすぐれないようでしたら、お食事はこちらに運ばせますので。…それとひとつ、お伝えします。…恭一様ですが…」 その名を耳にした瞬間、私は思い切りお布団をどかし、体を起き上がらせた。 恭が、恭が何!? 必死な思いで目を大きくさせ見上げると、坂本は私を見て静かに息をついた。 そして目を反らす。 「私の判断ではありますが…、ご主人様や奥様には何も伝えない方がよろしいかと思い、内密にしてございます」 「…え?」 「どうか、恭一様のことは一刻も早くお忘れになった方がよろしいかと…。来週にも、高遠家とのお食事会が設けられる手配になっておりますので」 「そ、そんな…」 帰ってきて、もうそんな話になっているの? 家を出た意味なんて、無かったってこと? あまりの衝撃に、言葉を失ってしまう。 「恭一様にも全てお伝えして参りました。恐らく、二度と会うことは…」 「うるさい!やめて!」 そばにあった枕を、坂本に強く投げつけた。 もう、自分に残された道はひとつしかないの? このまま全て成り行きに身を任せるしかないの? 私、歯食いしばって、シャンティから出てきたんでしょ? 勢いよくベッドから降りると、その足で自分の部屋を後にした。 噴き出す思いを胸に、両親がいるであろうダイニングへ向かった。
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