第6話

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8月に入ってすぐのこと。 幕張海浜公園で花火フェスタというものが開催され、私は初めて花火大会というものに足を運んだ。 会場は見るもの全てが新鮮で、こんなに賑やかな雰囲気を味わえるとは思わなかった。 初めて見た夜空に上がる花火はもちろん素晴らしくて、感動のあまり言葉を失ったほど。 その光景は、私の瞳にしっかりと焼き付けられた。 もちろん、隣にいた恭の横顔も。 またひとつ、忘れられない思い出が増えていく。 きっとそれは恭といる限り、永遠に続くものなんだろう。 そう感じながら、毎日を楽しくしあわせに過ごしていた。 そして夏も終わりに近づき、晋くんや龍くんも再び学校が始まると、また慌ただしい毎朝がやって来た。 と言っても、仕事の始まる時間は同じなわけで、回る時間も同じなんだけど。 私にとって、シャンティでの生活全てが当たり前に。 隣に恭がいて、晋くん龍くんがいて、友達がいて…。 その当たり前が、元気の源になっていた。 だいぶ秋の気配が漂ってくるころ。 私はいつものように仕事を終え、キッチンで夕食の準備をしていた。 今日はビーフシチューにしよう。 仕事の疲れも何のその。 楽しんで料理を進めていた。 鼻歌混じりでキッチン台に向き合っていると、ドアがガチャッと開く音がした。 振り返ると、やって来たのは晋くんだった。 「あ、おかえりなさい!」 ニッコリ笑顔でそう言って、再びキッチン台に向き直る。 が、晋くんからめずらしく返事がなかった。 …あれ? 不思議に思い、再び振り返ってみる。 そこには、全く動かずにドアのところで立ったまま、私を見つめ続ける晋くんがいた。 その表情は、とても真剣なもので。 私は目を大きくして見つめ返していた。 「…晋くん?」 何事かと首を傾げ、声をかけてみる。 すると、晋くんは私の声にハッとしたように、慌てて視線を反らしていった。 その仕草に、胸の中で違和感が溢れ出す。 …え?どうしたの? 何かあった? 私は一歩踏み出し、さらに声をかけた。 「…あの、…どうかした?」 晋くんは何度か瞬きした後、ゆっくり私へ顔を上げてくる。 なぜか緊張したようなその面持ちに、目が離せずにいた。 フゥと一息ついたのだろうか。肩が動いたときだった。 「……大河内…柚花…?」 静かに、ボソッと呟かれたかのような問いかけに、次に体を動かせなくなったのは、私だった。
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