第6話

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「恭には…、ちゃんと、自分から話すから。だからお願い。今話したことは、誰にも言わないで」 「……柚…」 晋くんはどこか哀しそうに、心配そうな表情で私を見つめていた。 そしてそっと、口を開く。 「わかった。言わない。…でもな、時間の問題だと思う。駅で、結構な人数で聞いてたし、柚には顔見知りもいるだろ?ここにすぐ、たどり着くんじゃ…」 その話しに賛同するように、何度もウンウンと頷いた。 「晋くん、教えてくれてありがとう。…ごめんね。私……。…ごめんね」 それ以上、言葉にすることができなかった。晋くんを見つめることも。 そこからの私はまるで脱け殻のように、ただ料理をするため手を動かしていた。 今日まで、全く見つかる気配なんて感じなかったのに。 このまま、見つかることもないんだとさえ思っていたのに。 …なのに、…すぐそこで探してるだなんて…。 お鍋を見つめながら、涙が滲んでどうしようもなかった。 その日の夕食時、私はなるべく笑顔を繕っていた。 晋くんは時折静かになることもあったけど、その姿はいつもと変わらずで。 いや、いつもと変わらないようにしてくれてるんだよね、きっと。 本当に、心から頭を下げ、何度もごめんなさいと胸の中で繰り返していた。 そして食事中、私は恭を見ることができなかった。 見てしまったら、目が合ってしまったら、泣いてしまうかもしれないと感じていたから。 頭の中はグチャグチャで、どうしようの連続で…。 食事が終わっても、片付けをしていても、ひたすらそのことばかりを考えていた。 全てを終えて、自分の部屋へ戻り、お布団の上で呆然とする。 勝手に涙がこぼれ落ち、手で拭っていた。 …ここにこのままいれば、きっと見つかる。 もしかしたら今にもやって来るかもしれない。 だとしたら、逃げなきゃダメなんじゃない? 今すぐにでも、ここから出ていかなきゃ、ダメ…なんじゃない? さらにこぼれ落ちる涙を拭い、歯を食い縛る。 …恭には? 恭には、伝えなきゃ、…いけないよね。 私、言えるかな。 恭の顔を見て、瞳見て、言えるのかな。 「…っ…、うっ……っ」 私は顔を手で覆い、流れるままに解放した。 どれくらいそうしていたかは、わからない。 ふと時計を見ると、すでに日付は変わって1時になるところだった。 …ダメ。…ダメだよ。 泣くことで時間を使っちゃいけない。
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