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「踏んでいただけますか」
仮にも恋人にこう言われて、戸惑わない人間がいるだろうか。
話は少し遡る。
数ヵ月前、友人から紹介されて親しくなった彼。いつの間にか惹かれていたのも事実で、晴れて恋人関係となり。
私とて子供ではない。
彼の自宅に招待されたということは――つまり、そういうことなのだろうと思っていたのだ。
「今、なんと?」
「踏んでください」
私は椅子に。
彼は床に正座し、はっきりとした口調で続ける。
「自分、マゾヒストなんです。初めてお会いした時から、是非あなたに踏んでもらいたくて」
……彼が独り身である最大の理由はこれだったのかもしれない。
背がかなり高く、顔はあまり好き嫌いを言われない程度に整っている。よくもまあ周囲の女の子が放っておいたものだ、と思っていたくらい。
期待に満ちた瞳で見上げてくる恋人を私は見つめ返し。
そして、恐る恐る太股に脚を伸ばした。
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