E.1

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「踏んでいただけますか」 仮にも恋人にこう言われて、戸惑わない人間がいるだろうか。 話は少し遡る。 数ヵ月前、友人から紹介されて親しくなった彼。いつの間にか惹かれていたのも事実で、晴れて恋人関係となり。 私とて子供ではない。 彼の自宅に招待されたということは――つまり、そういうことなのだろうと思っていたのだ。 「今、なんと?」 「踏んでください」 私は椅子に。 彼は床に正座し、はっきりとした口調で続ける。 「自分、マゾヒストなんです。初めてお会いした時から、是非あなたに踏んでもらいたくて」 ……彼が独り身である最大の理由はこれだったのかもしれない。 背がかなり高く、顔はあまり好き嫌いを言われない程度に整っている。よくもまあ周囲の女の子が放っておいたものだ、と思っていたくらい。 期待に満ちた瞳で見上げてくる恋人を私は見つめ返し。 そして、恐る恐る太股に脚を伸ばした。
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