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「見ているだけで構いませんよ」
不安を打ち明けたところ、彼はそう答えてくれた。
私がほっとしたのもつかの間、彼は唐突にベルトを緩めて自慰を始める。
見ていろとはそういう意味なのか。
屹立を擦り、性の快楽を得る姿。
プライベートにも程がある部分と行為を晒け出し、吐息は徐々に甘さを含み震え出す。
猛りが増し、最後の追い込みになる頃。
「手を止めて」
息を詰める音――何故、と問いたげな表情を刹那浮かべた後、名残惜しそうにゆっくりと手を離す。
本来なら、自由にできるはずの自慰でさえ。
絶頂に達する直前に止められて、それでも喜悦の貌は消えず。
なんと浅ましく、無惨なものだろう。
彼の手は濡れている。
物欲しそうな顔をして、然れどその言葉を発する権限は彼になく。
私はたっぷりと時間を置いてから。
とはいうものの、あまり長くするのもどうかと思ってしまった。だいたい15秒、ゆっくり数えてから。
許可する、と呟いた。
上り詰めたままに放置されていた欲望は、まさに爆発したと言うべきだろう。一度や二度で済まされはしない、そのまま狂ったように慰めを続ける。頬は紅く、目にはうっすらと涙さえ浮かべて、許された快楽に身を委ねていた。
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