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――次の瞬間、俺は再び吉祥寺駅前にいた。
吉祥寺駅前ではサンタの服を着たケーキ屋の店主が、小さな子供達にクッキーを配っていた。
小さな男の子は、クッキーの袋をもらい得意顔だ。
目の前の信号が赤から青に変わった。
男の子は横断歩道の向こう側にいる母親の元に走り出す。
1台の車が、車道側の信号が赤になったにも関わらず、スピードを緩めるどころか、スピードを速めた。
雛が男の子を助けるために車道に飛び出す。俺は雛を助けるために車道に飛び出した。
夢の中で俺は、同じ12月25日の同じ時間を2度繰り返した。
雛を救いたくて…
俺はもう1度、ここに戻ったんだ。夢の中でそう思った。
夢なのに雛の体のぬくもりを感じた…。
俺は全力で雛を守った。
だけど…
2人とも暴走車にはね飛ばされ、俺達は…病院に搬送された。
――目覚めると、俺は電車の椅子に座っていた。
俺は…悪夢を見た。
酷い脱力感。
体がやけにだるい。
車中での僅かな時間が、とても長く感じられた。
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