2話 揺るぎ続ける日常

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「疲れた...」 彌生先生の奴、相変わらず体育となると容赦ない。 「何してるのですか?」 「佐由美?」 佐由美が何やら背後に何か隠しながら、俺に話をかけてきた。 「全く、途中までかっこよかったのに...」 「は?」 「な、なんでもありません!」 佐由美の発言を理解できない終。 「こ、これ食べてください!」 「え?」 渡されたのは弁当箱だ。 中を見ると何度か見た佐由美の家庭料理の姿が見てた。 「まさか、お前が?」 「か、勘違いしないでください!でも一週間は私が昼食を作るので...」 「ありがとな」 俺は率直にそう言った。 「ど、どうも...」 なんで女って言うのはこう自分からの行為をいつもいつも照れるのだ? 「で、では私はこの辺で...」 「おう」 佐由美は屋上から姿を消した。 しばらくすると、また人が現れた。 「女の子に弁当を作ってもらうとは、マスターも隅に置けないですねー」 「勘違いするな」 その呼び方から分かるように瑠璃子だ。 「どうしたんだよ、わざわざこんな所に?」 「いいではありませんか、それよりマスター...」 急に空気が重くなった。 「佐由美に明かすつもりですか?」 恐らく俺のことを言っているのだろ。 「佐由美は希望ある高校生だ、無理にでも社会の裏側を知らなくていいだろう」 そう、この秘密は簡単に流失していい秘密ではないのだ。 「優しいのですね」 「どうしてだ?」 俺は当たり前のことをしてるだけなのに、なんで皆は俺を評価するんだ? 「でも結局、学校に来ましたね」 「仕方がないのだ、愛依が決めたルールだからな」 そう、仕方がないのだ。 「まあ理由がどうあれ、一歩進展したんですからご褒美をあげないと...」 「あ、褒美だと?」 すると瑠璃子は腰を下ろして、俺の手を取りキスをした。 「...普通逆だよね?」 そう言うのは普通男からするものでは? 「もー、少しは嬉しがって下さいよ」 いやただ手の甲に女子高生の唇が当たっただけだよね? 「でもまあ、一日も欠席せずに学校に来てくれたら、今度はちゃんとしたご褒美をあげますから!」 「はいはいそれは期待してるよ」 こうして、学校生活一日目が終わったのであった。 「あれ?瑠璃子は?」 「用を済ませてから行くって」 「え?」 ─────
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