罠。

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「一式さんも狭山も、むやみやたらと他者を傷つける事はありません」 「笹井貴様…」 「おいおい、幾ら同期でも、人の話を遮る奴があるか」 意外そうな表情を隠そうともせずそう言いかけたみさきを、醇一は苦笑しつつそう諭す。 みさきにしてみれば、それは実に意外な一場面であった。 確かに今のところ、みさきは醇一と揉めた事はない。 かといって必要最小限以外の言葉を交わした覚えもないから、陸攻の親友である嵐山はともかく、醇一がなぜこの場にいるのかがみさきはどうしても理解出来なかった。 (まさか… 小林さんも笹井も、俺なんかを庇おうってのか? 馬鹿だよ… 小林さんも笹井も馬鹿過ぎる… そんなことをして、あんたらに一体何の得が…) 心の中でそう何度も繰り返すみさき。 何時しかそれは表情に表れていたらしく、嵐山がそっと呟くのであった。 「察したり狭山。 それが江田島健児やさかいにな」 「!」 みさきの中で何かが弾けた。
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