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「当たり前だッ!
俺がそんな真似をするような卑怯者に見えるか!」
精一杯の声を張り上げながら啓吾。
嵐山は危なく
「…そうとしか見えんわダボ」
…と口にするところであった。
それを知ってか知らずか、左京はさらに話を続ける。
「疑問はまだございますよ本橋啓吾陸軍参謀本部付参謀。
早瀬康博さん。
三人がこれ程の傷を負っているにも関わらず、貴方がたは何故曽根崎警察署に被害届を出さなかったのでしょう?
そして、一週間もの時間があったのにも関わらず、何故一式生徒と狭山生徒の起訴手続きをなさらなかったのでしょうか?」
「そ、それはその…」
「怪我の具合もはっきりしないうちにそんなことをする訳には…」
「お言葉ですが、怪我の具合でしたら後日診断書を然るべき場所に郵送すれば済むことです。
そして最後の疑問ですが、本橋参謀殿は何故曽根崎警察署でも大阪憲兵隊でも海軍兵学校でもなく、永野修身海軍大臣に今回の件を真っ先に伝えたのでしょうか?
如何に海軍関係者が起こした事件とは言え、いきなり海軍省に押しかける必要がどこにあったのでしょうか?
それこそお門違いもいいところ。
学生同士の喧嘩を自分達だけに都合が良いように脚色し、それをネタにして2/26事件以来頭の上がらない海軍に頭を下げさせようと、仲間を集めた上で言い掛かりをつけた。
…そう疑われても仕方がないとは思わなかったのでしょうか?」
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