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「ふん。
何を言うかと思えばバカバカしい。
帝大生といえど人間。
江田島の生徒に袋叩きにされては、思い違いの一つや二つあるのが当たり前だろうが。
それに、三人が健児とは名ばかりの暴漢共に怪我をさせられたのは明白な事実だ」
そう言いながら左京から診断書の束を引ったくり、老紳士の真ん前に放り投げる啓吾。
極めて愚かな事に、未だ参謀本部付参謀の威光が老紳士に通用すると信じて疑わない。
すると老紳士は、半ば呆れつつ口を開くのであった。
「貴官は松上警部の話を全く聞いていなかったらしいな。
全身包帯だらけになる程の怪我をしたというのに、なぜ三人とも大阪ではなくわざわざ東京で受診する必要がある?
それに、先程松上警部が述べた通り、三人の診断書を書いた者は民間の医者ではなく陸軍の軍医だ。
大佐の階級をちらつかせれば、自分達だけに都合の良い内容に仕上げさせるなど朝飯前でではないか」
またもやあっさりと制される啓吾の言葉。
しかしそれは、啓吾のちっぽけなプライドをますますズタズタに踏みにじる。
「貴様言わせておけばッ!」
「見苦しい真似は止せと言っている。
そんなに甥が可愛いのなら、そんな出鱈目な診断書を書く藪医者に二度と診せるべきではない。
なんせ骨折もしていないのに、包帯とギプスを無駄に寄越す程なのだからな」
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