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「そして、そこの君と君と君。
さっきは随分軽々と腕を動かしていたが、仮にも帝大生が骨折箇所を動かしてはいい笑い者だと思わんのか」
遂に老紳士の舌鋒が、付添人ではなく自称一流倶楽部の三人に及び始める。
だが、啓吾は可愛い筈の甥っ子たちを守る処か、依然として老紳士に対する威圧そして恫喝をやめようとはしなかった。
「はぁ?
確か井上とか言ったな貴様。
如何に永野海軍大臣の使いだからといって、あまりいい気にならん方がいいぞ。
はっきり言ってやる。
ここ海軍兵学校にアンタは場違いなんだよ。
それに、この俺が本気になれば、あんたの勤め先など三日で叩き潰してやることだって出来るんだぞ?」
ニヤリと嫌らしく笑いながら啓吾。
彼の記憶が正しければ、今まで啓吾こう凄まれて怯まなかった者等誰ひとりとしていない。
しかし井上氏は、それがどうしたと言わんばかりの態度で口を開いた。
「では、こちらもはっきり言ってやろう。
一年、いや、百年かかっても貴官には無理だ。
私の勤め先は横須賀だから、文句があるなら遠慮せず、今日のように徒党を組んでいつでも言って来るがいい。
まぁ、今日と同様蛆虫程度の同類しか集められんとは思うがな…」
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