罠。

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如何に参謀本部付参謀や伯爵や新聞社社主の七光りを誇る自称一流倶楽部の面々といえど、海軍少将と候爵家それに先代とは言え大阪憲兵隊司令を同時に敵に回したりしようものなら、それは自殺行為以外の何物でもない。 しかし、往生際の悪い輩とは古今東西どこにでもいる… 「あ、あなた方は恥ずかしくないんですか!! そうやって権力や家の力を笠に着て、抵抗出来ない人間を高い所から散々追い詰めた上に傷つけるなんて、人間として大日本帝国臣民そして陛下の赤子(せきし)として恥ずかしくないんですか!!」 付添人そして康博と弥吉が顔を真っ青にして震えている中、完全に裏返りそしてうわずった声で悟だけがそう叫んでいた。 「プッ… どの口が言うとんねん…」 思わず声を殺すのを忘れてしまう程、嵐山は悟の言葉に驚き呆れ尚且つ失笑したものの、いつになく腹わたが煮え繰り返っている。 どう考えても、戦友である陸攻を長年に渡り虐げて来た奴に、そんなことを言う資格があるとは思えないし微塵も思わない。 「然り …ですね」 醇一も同じ気持ちなのか、思わずそう呟いていた。
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