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「おはよう、杏奈ちゃん。」
「うん、おはよ。唯花!」
みんなにはよく言われる。
「そんなに後悔するなら別れなきゃよかったのに」って。
「ねぇ、英語の新学期課題やった?すごい難しかったよね?」
「あーっ!わ、忘れてたや・・・。唯花~見せてっ!」
「も~杏奈ちゃんってば、仕方ないな
ぁ。」
正直、あたしのことをちゃんと知ってるのは唯花だけだと思う。
彼氏と別れて2ヶ月。
もう、あたしのなかでその事実は掻き消されようとしていた。
「もう新学期だね!錦先輩卒業しちゃったよ・・・。」
はぁ、と肩を落とす唯花。
錦先輩とは見た目よし、頭よし、運動神経よし、しかも性格よしという完璧な先輩。
唯花は錦先輩が入学してから1年間ずっと好きだったんだけど・・・。
「話をすることもなく卒業・・・。
はぁ・・・。」
「ま、まぁまぁ。」
3月に錦先輩が卒業してからというもの、ため息をつきまくっていた。
「あ、ほら。あれ新入生だよ?うっわぁ、若い!」
少しでも機嫌を直そうと話題を変えると唯花も乗ってきてくれた。
「あ、あそこにいる男の子かっこよくない?!」
唯花が新入生軍団の方を指してきゃーっと黄色い声をあげる。
「ほんと唯花は面食いだな~。」
笑いながらみると、まぁ確かにかっこいい。
茶色がかったさらさらの髪の毛。
男のくせに超小顔。目元も少しつり上がってて・・・なのに優しそうな目。
少し着崩した制服が周りの空気とあっててかっこいい。
・・・けど、あーゆーやつこそ、あたしは苦手。
目を逸らそうとしたそのとき。
目があってしまった。
「うわっ!目ぇあった!」
さっと視線を外す。
そのあと盗み見ると友達と普通に話しているようだった。
「えーっ!いいなぁ。」
唯花は変わらず甲高い声をあげていた。
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