蝉の声

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 誰かにそう言って欲しかったんだ。  俺と云う存在を認めて欲しかったんだ。  親に捨てられ、周りから白い目で見られて…それでも俺は“あなたの代わりなどいないのよ“って誰かに言って欲しかったんだ…。 「ゼルくん…?」  !  何を考えているんだ、俺は!  急いで彼女を俺の腕から解放した。 「あぁぁ~ごめん!いきなり…」  いきなりなんだと言うのだろう…。  俺の腕の中にスッポリと納まった彼女の体の感覚が抜けなくて、気の利いた言葉が浮かばない。  それにしても、自分の行動に吃驚だ。今年のマイベストオブ・ビックリ賞を受賞してしまうかも知れない。…多分するだろうな。こんな事はもう二度とごめんだ。  抱きしめてしまった俺でさえ驚いているのだから、抱きしめられた彼女はさぞ驚いただろう。
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