蝉の声

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「あはは~慌ててて、変なの~」  …。  え?それだけ?  彼女は何もなかったかのように、俺に背を向け紙コップをゴミ箱に捨てた。  俺が思っている以上に女の子ってのは、何も思わないのだろうか?  なんだか、切ない気持になるなぁ。慌てて損した気分。  …嫌、得した気分か?抱きしめたんだし…って、ちょっと違うから。しっかりしろよ、俺。  …なんだか情けなくなってきた。 「でも…ソラも顔が熱いなんて変だね?」  頬を赤く染めた彼女が、振り返って微笑んだ。  カーっと自分の顔に血が上り、返す言葉もなくただ恥ずかくて目を逸らした。 「…そろそろ中に戻ろうか?」 「うん」  俺の提案に頷く彼女。  この後、残りの絵を見て回ったけど、うわの空だった。隣にいる彼女が気になってしまうんだから仕方ないと何かに諦め、絵に目をやっていた。  たまに目が合うと彼女は照れ笑いを浮かべた。  それがどうしようもなく、俺をどうしようもない感じにさせたのだった。
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