蝉の声

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 約束の時間の十分前に着くよう家を出てきた。  今日は彼女の家に行ってから、どうやって展示会に行くのか分からないから自転車は置いて来た。  でもこうやって歩いていると風がないせいで、やたらと暑く感じる。なるべく日陰を選んでいるんだけど、服が熱を吸収してるから纏わりつくように暑い。  服を脱いでしまいたいけど、そんな事したら警察のお世話になりそうだ。  この角を曲がったら少しカーブがかった道を、道なりに進んでいくと彼女の家に着く。  予定通り十分前に着くと良いけど、初めて徒歩で来たから自信はない。  勿論十分前に着くようにしたいのは、ソラちゃんを待たせないようにと思っての行動だ。  …ん?人影…?まさか…。 「あっゼル君。やっほ~」  家に近づいて行くと、俺の気も知らないで彼女ソラちゃんは元気よく手をブンブンと振った。  はぁ~。なんでこんなにも早く外に出てるかなぁ。  これじゃあ俺が来るの遅かったみたいじゃんか。  なんだかカッコ悪。    俺は今日彼女に誘われて展示会に行く。  そう彼女に誘われて、だ。    だから、下心なんてこれっぽっちもない。  そう一㎜も…
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