蝉の声

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「ん~ニオイした方が、グロさが出て良いんじゃないの?」  首を傾げながら、俺の隣に戻ってきた。  戻って来たって言い方は変かもしれないけど、まぁ兎に角さっきいた位置に来たんだ。 「そうなのかな?でも、俺は絵を見ただけで、その世界に引き込まれて、ニオイが感じられる方が絵の完成度は高いと思うんだ」  香料は使ってみたいけど、この思いが俺を踏み止めさせる。  俺には思い切りが足りない。 「使ってみたいけど、そう思うからこそ俺は香料を混ぜないんだ。それに…」  自分の考えを口に出して、言い聞かせるように口調を強めた時“俺は何熱く語っているんだろう?”と疑問が脳裏を掠めた。  こんなどうでもよさそうな事を、熱く語られても彼女に迷惑ではないのだろうか?  これは俺の勝手な行為だ。 「それに…?続きは~?」  …“どうでもよくない“の…か?  君は俺の声を聞いてくれるのか…?
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