第1章

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「今週の日曜におまえんちに行くわ。おじさんの都合聞いといて」 ご飯を食べてからの帰り2階で閉まりかけたエレベーターのドアのすき間から思い出したように直樹が言った。   「はぁ?」 私は思わず聞き返したが、ドアが閉まり上昇を始めた。 引き返そうと考えたが、また戻れなくなりそうなので急いで電話をかける。   「何?」   「どういうことよ。なんでうちに?」   「あいさつに決まってんだろ。早くしないと落ち着かないし」   「そんな急に言われても」   「とにかく行くから、お前が都合つかなくても俺一人で行くよ」   「行くなら一緒に行くわよ。あんた一人来られても父さんも困るじゃない。それに知らないとこであれこれ話されるのも嫌だし」   「じゃあ二人で行こう。連絡よろしくな」 そう言い終えると、電話は切れた。 やっぱり直樹だ。 思いついたら即行動なんだよね。 私は小さくため息をついた。 お風呂に入って髪を乾かしてチューハイでも飲もうと思っていたら、呼び鈴が鳴った。 “宅配?にしちゃ遅いよね?” そう思いつつ迷っていると、玄関先で、   「俺、俺」 って詐欺まがいの声がした。   「何よ?何か忘れ物?」 ドアを開けながら聞いた私の言葉には答えずに直樹は後ろ手でドアを閉めた。 そしてそのまま私を抱きしめる。 直樹の胸の温もりとシャンプーの香りが私を包んだ。   「な、なに?どうしたの?」 答えない直樹がさらにぎゅっと強く私を抱きしめた。 “答えられない…ってことは…” 私はゆっくり腕からすり抜けながら直樹の顔を見た。 ちょっと拗ねたような照れた顔をしている。   「まだ納得してない?心配なの?」   「ごめん」 直樹は小さくそう言うと私にキスをした。 深くなるキスに体が勝手に熱くなってくる。 直樹は私を抱えてベッドに降ろすと部屋の灯りを消した。   「ごめん。今夜どうしてもお前のこと抱きたくなった」 暗闇に直樹の声が静かに響くと私の胸の鼓動が早くなるのを感じた。 でも、その前に言わなくちゃいけないことがある。 「話があるの」 私がそう言うと、直樹はベッドに横たわる私の横に黙って腰掛けた。 「2週間前に高宮課長とは付き合うの辞めたの。それは課長が悪いわけじゃなくて私が自分の気持ちに気付いてしまったからよ」
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