第1章

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週末私たちは私の実家に向かっていた。 「おじさんたちと会うの何年振りだっけ?」   「一昨年マンションに来た時、ちょっとだけ会ったよね。だから2年ぶりじゃない?」 今朝から直樹の緊張は半端ない様子で電車に乗ってからもそわそわしている。   「殴られるかな…」   「あのねー…まだ言ってんの?あははっ」 私は呆れながらも吹き出して笑った。 直樹が私の頬を指で押した。   「笑い過ぎ」 そう言って大きなため息をついた。 重症だ。 私は電話での異様な母のはしゃぎ様から違う意味で心配してるんだけど。   電車を降りると直樹のスーツの背筋をパンと叩いた。   「しっかりしてよ。私まで不安になってくるわ」 すると直樹はふと思い出したように私の手を握った。   「ちょっと花屋に寄っていくから」   「花…屋?」 不思議がる私の手を引いて駅前の花屋に寄った直樹はピンクのバラの花束を作ってもらった。 恋人の家に挨拶に行くのにバラの花ってどんな“欧米か”かよって思ったけど、 本人は至って真面目に買ってたから茶化せなかった。 タクシーでもなぜか無言で緊張が伝わってくる。 私はそっと直樹の手を握った。   「直樹なら絶対に反対とかしないから、いつも通りにしようよ」 笑いかけながらそう言うと、直樹は力なく笑い返した。 タクシーが止まり家の前で降りると玄関が派手な音をたてて開いて、母が飛び出してきた。   「直樹君、待ってたわよ」 娘は私なんだけど…と思いつつ、今にも抱きつきそうな母のテンションに怖気づいた。   「おばさん。お久しぶりです。やっとこれ持って来れました」 直樹はそう言うとバラの花束を母に差し出した。   「これって。直樹君、覚えててくれたの? そう言って母は受け取ると大げさに花束を抱きしめて泣き出した。 これではまるで直樹が母を迎えに来たみたいだ。   「どうしたの?母さん。感動し過ぎだよ」 私は少し呆れてそう言った。   「だって優羽っ。直樹君がやっとこれ持ってきてくれたんだもの~。泣けるに決まってるじゃない」 そう言われても意味が解らず、私の頭の上には??が飛び交っている。   「まあ、なんだかわかんないけど中に入ろうよ。表じゃ恥ずかしいわ」 とりあえず私は感動の再会の二人を玄関の中へと促した。  
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