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元彼と再び別れ、幼なじみが恋人になるようなそんなドラマティックな週末を過ごしても月曜の朝は普通にやって来た。
結局土日を二人で過ごし、日曜の夜も一緒にいたがる直樹を引き剥がす様にして、部屋に帰った。
土曜のうちに直樹は瑞希ちゃんに電話をし、私たちの話をしたそうだ…わかっていても親しげな二人のやり取りを聞きたくなくて、私はお風呂に入っていたけど…。
部屋に戻って私も笙さんに話そうかと思ったのだけれど、結局電話片手に言葉が出ずに迷っているだけで。
あえて報告するのも変だし、何かの時に話せればとあきらめた。
朝食を取り、いつものように会社に行く支度をしながら、金曜までの自分とは違うものを感じていた。
「おはよ。おっせえよ」
マンションのエレベーターが開くと、入り口近くの壁にもたれ、まだ少し眠そうな目をしたスーツ姿の直樹が声を掛けてきた。
「おはよう。どうしたの?待っててくれるなんて?」
「たまには一緒に行くかなと思って」
隣を歩きながらそう言った直樹の少し照れた顔が愛しくて、素直にそう感じた自分がおかしかった。
「なんだよ、にやついて」
「なんか照れくさいね」
「ばーか」
「今日はたぶん帰りに伊知子と食事して帰るから」
「そうか、俺も9時超え確実だな」
そんないつもと同じ会話が先週とは違う響きに聞こえる。
「帰ったらメールするよ」
そう言った直樹が一瞬指を絡めるように私の手を握ってすぐに離した。
私は意味が解らず、横顔を見つめると、前を向いたまま
「ちょっとな。これ以上は仕事モード切れそうだから」
と言った。
そんなこともうれしくて私も微笑んで横を歩いた。
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