328人が本棚に入れています
本棚に追加
“あれ?”
「待って、なんか話変わってない?今『お嬢さんをください』とか言わなかったっけ」
私はぼんやりと浮かんだ疑問をつぶやく。
「お前はそういう事は気付くのか。いいんだ。おんなじことだから、なあ、直樹君」
父はまたちょっと残念そうな顔をした。
そんな顔されても私は…
そうだっ!プロポーズされてないし!
「直樹、順番が違うよ!」
私はそう言って立ち上がって部屋を飛び出した。
階段をかけ上がってすぐの自分の部屋のドアを閉める。
「優羽!」
追いかけてきた直樹がドアの前で私の名前を呼んだ。
「ちょっと一人にして。何が何だかわかんないよ」
私は自分のベッドに突っ伏した。
直樹がドアの側に座り込んだ気配がした。
“プロポーズもされてないのに両親に話して、結婚が決まるとか…ありえないでしょ”
なんかそう思うと余計腹が立ってきた。
女子なら誰でも例えばどこかの高級レストランでとか遊園地の観覧車の中でとか夜景とか海とか、いや普通に自宅で、でいいからちゃんとプロポーズされたいよね?
父さんはああ言ったけどやっぱり違うよ。
「優羽、ごめん」
廊下で声がした。
「俺、なんかテンパって。一生懸命言わないとって話してたら…ごめん。つい“ください”って言ってた。だってさ…」
私の言葉を待たずに直樹は続ける。
「だって今すぐに欲しいんだもん、お前の事」
”え!?”
「毎日一緒にいたいし…」
”はぁ?”
「毎晩一緒に寝たいし…」
”な、なにを…”
「俺的には毎晩だってお前と…」
「や、やめて!」
私が真っ赤になって部屋を飛び出したのは言うまでもない。
「人の実家で何言ってんの?恥ずかしいでしょ」
「だって、ホントの事だし。今日からだって一緒に暮らしたいんだ」
廊下に座った直樹は真剣な目で私を見つめている。
「だからって…」
私はもう自分でも何が言いたいのかわからなくなっていた。
呆然とする私の前に直樹が立ち上がった。
スーツのポケットから何かを取り出して、私の目の前に差し出す。
最初のコメントを投稿しよう!