第1章

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「これって?」 それは見覚えのある箱、それを直樹が開いて言った。   「順番違ってごめん。付き合う許可が出たらすぐに渡そうと思ってた」 中にはダイヤの指輪が光っていた。   「僕と結婚してください」 私はやっぱり直樹の事ちっともわかってなかった。 直樹の本気は半端なくて用意周到で、今日両親に結婚のOKも貰うつもりだったんだって気づく。 完敗だ。 私は大きく息を吐いた。 だったらこういうしかない。   「はい」 微笑んでそれを受け取った。 直樹が左手の薬指にそれをはめてくれて、私を抱きしめた。   「優羽、直樹君お話終わったかしら?お寿司来たわよ。食べましょ~」 階下から母の声がする。 このタイミング…聞いてたのね…まちがいないわ。 それから、2週間後の週末に松阪家に再び二人で訪ねて行った。 おじさんは予想以上にとても喜んでくれて、今回は二人でおばさんの墓参りもした。 私の手にはもう過ぎてしまった母の日のカーネーションの花かご。   「おばさん、これからはお母さんって呼びますね」 私と直樹は墓前で手を合わせた。   「ねえ、優羽。母さんもこうなること望んでたような気がするんだ」 直樹が墓地からの帰り道に話し始める。   「そうね」   「さっき手を合わせた時さ…母さんが笑った気がしたからさ」 私もそんな気がしていた。 そう思いたかったからかもって思ったけど、直樹が感じたんなら間違いない。 だから、私はお母さんにもう一度言ったの。   “直樹の事はまかせてね” って。 そしたら、あの日のあの綺麗な笑顔で優しく微笑んでくれた。   「幸せになろうな」 直樹が私に手を差し出して、私はその手をそっと握った。                                                … fin
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