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「これって?」
それは見覚えのある箱、それを直樹が開いて言った。
「順番違ってごめん。付き合う許可が出たらすぐに渡そうと思ってた」
中にはダイヤの指輪が光っていた。
「僕と結婚してください」
私はやっぱり直樹の事ちっともわかってなかった。
直樹の本気は半端なくて用意周到で、今日両親に結婚のOKも貰うつもりだったんだって気づく。
完敗だ。
私は大きく息を吐いた。
だったらこういうしかない。
「はい」
微笑んでそれを受け取った。
直樹が左手の薬指にそれをはめてくれて、私を抱きしめた。
「優羽、直樹君お話終わったかしら?お寿司来たわよ。食べましょ~」
階下から母の声がする。
このタイミング…聞いてたのね…まちがいないわ。
それから、2週間後の週末に松阪家に再び二人で訪ねて行った。
おじさんは予想以上にとても喜んでくれて、今回は二人でおばさんの墓参りもした。
私の手にはもう過ぎてしまった母の日のカーネーションの花かご。
「おばさん、これからはお母さんって呼びますね」
私と直樹は墓前で手を合わせた。
「ねえ、優羽。母さんもこうなること望んでたような気がするんだ」
直樹が墓地からの帰り道に話し始める。
「そうね」
「さっき手を合わせた時さ…母さんが笑った気がしたからさ」
私もそんな気がしていた。
そう思いたかったからかもって思ったけど、直樹が感じたんなら間違いない。
だから、私はお母さんにもう一度言ったの。
“直樹の事はまかせてね”
って。
そしたら、あの日のあの綺麗な笑顔で優しく微笑んでくれた。
「幸せになろうな」
直樹が私に手を差し出して、私はその手をそっと握った。
… fin
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