第1章

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タオルを置いた直樹がため息をついた。   「付き合うんだからあいさつに行かねえとな」   「いいよ、電話で言っとくから。直樹だったら良く知ってるし、OKだよ」   「いくらなんでもそりゃないだろ。キチンとあいさつに行くから予定立てよう」 そう言いながらもちょっと憂鬱そうな表情をした。   「やっぱ俺が相手じゃ殴られるかな…」   「…っ?」 まさかそんな事を考えていたとは想像できなかったから、私は吹き出した。 「あははっ、ドラマじゃあるまいし、ないない。馬鹿ねぇ」 「お前にはこのビミョーな男同士の感じはわかんないよ」 そう言ってグラスのお茶を飲み干した。   「でもちゃんといろいろ考えてくれてうれしいな」 私は素直に言った。 私もどこか変わり映えのしない私たちの関係になんらかのケジメの様な物が欲しいと思ってたから。 ちゃんと付き合うってカタチにしたかった。   「今すぐにでも一緒に住みたいんだ」 直樹は私の頬を撫でた。 直樹からいつもの無邪気さが消えて、その目が熱を含んで何とも色っぽく見えて、まともに見れずに目を逸らした。   「乾かしてくる」 私はそう言って、洗面所に逃げ込んだ。 ドライヤーの熱のせいだけじゃなく頬が熱い。 今までの直樹と違って見えるのは私の気持ちのせいなのか、それが男としての直樹の姿なのか。 とにかく直樹にドキドキしてしまう自分自身の気持ちの変わりように戸惑っている。 「直樹だよ、直樹」 髪を整えながら、鏡の中の自分に言い聞かせるように呟く。 そして、なぜか気合を入れてリビングに戻った。   「あれ、直樹?」 ソファには直樹の姿はなかった。 まさかと思ってベッドを見ると、既にそこに横になっていた。   「信じられないなぁ」 私はリビングの灯りを消して、タオルケットを2枚出して1枚を直樹に掛け、隣に同じように横になった。 広いベッドに憧れてたのでセミダブルにしたがやはり二人だと狭い。 向き合うと、落ち着かないので背を向けるような体勢を取った。 微かに感じる温もりにほっとする。 だけど、すぐに寝返りを打つ気配がして体をグイッと引き寄せられた。
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