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やべっ。
ちょっと強く言い過ぎたか……
俺を睨み上げる葵の目には揺れるものがあった。
「私は柊ちゃんに会えて嬉しかったのに……」
会いたかった人に会えた喜びは俺にだって分かる。
だって、その人が目の前にいるんだから。
だけど、会えた感動が双方にあるとは限らないんだ。
「悪いとは思ってるけど……離して」
葵の腕をゆっくりと押し返すと、さっきまでの拘束力が嘘みたいにすんなりと解かれた。
「しゅ…………か」
「葵?」
僅かながらの情けを見せようとした俺の手が葵へと伸びた。
「柊ちゃんのバカッ」
「さっきからギャーギャー、うっせーんだよ」
俺でも匠海でもない声。
その低く黒い声に背中が戦いた。
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