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「誰かに代わりしてもろたらええんです」
「誰かいうて、誰がおるんや。さっき黄鬼どんも言うてたけど、今、ジゴクは大忙しやから人手不足で代わりをしてくれる奴はおらんでえ」
「ほら、そこにおりまっせ」
「そこやいうて、あのふたりの人間か」
「そうです。あの人間です」
「あのふたりが門番してくれても、わしらがジゴクの中にはいってたら、ここに来る黄鬼どんにばれてしまうがな」
「大丈夫、大丈夫。そこんところは考えてますわ。あいつらにわしらに化けてもらうんです。まず、わしらの顔の皮をひきはがして、あいつらの顔の皮と交換しますのや。次に、わしらの鬼のパンツとあいつらの服を交換して、あいつらの体も赤と青のペンキで塗ってしまう。ひとこともしゃべらんようにうなずくだけにしたら、これで大丈夫。ばれんのとちゃいますか」
「大丈夫が2回続いたけど、ほんまに大丈夫かいな」
「大丈夫、大丈夫、おまけに大丈夫。三遍言うたら大丈夫でっしゃろ。あっ、4遍や。人生もいっぺん、ジゴクもいっぺんでっせ。なんでもやってみまひょ。ほな、さっそく実行や、そこのふたり、こっちへ来い」
「門の中へはいるのではないのですか」
「ええから、こっちこい」
ふたりは恐る恐る青鬼と赤鬼のそばに寄ってきた。
「ええか、今から、わしらの言うことよう聞くんやで。いっぺんしか言わんで。お前らの人生もいっぺんやったさかい」
立ち尽くしたままうなずくふたり。
「わしらは、これからお前らふたりの代わりにジゴクへ行って来る」
「すると、私たちは極楽へ行けるのですね」
手をとりあって喜ぶふたり。
「何喜んどんのや。そんなこと一言もいうてないで。それにジゴクへ行くか、極楽へ行くかは閻魔さまが決めることや。わしらにはそんな権限はないわ。それにお前らはこうしてジゴクに来とる。そんな話やない。わしらふたり、門の中のジゴクに用があってな、ちょっと行ってこなあかんのや。今、ジゴクも忙しいてなあ、わしらの代わりに門番をしてくれるもんがおらへんのや。そこで、お前らふたりに、わしらが帰ってくるまで門番をして欲しいんや」
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