第二章 二人の男

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「ジゴクの門番など、今までしたことがないので、私たちふたりにできるのでしょうか」  互いに顔を見合すサラリーマンと放浪者。 「そんなん、わかっとるがな。ジゴクの門番したことのある人間なんかおるもんか。なあに、門番やいうても簡単や。さっきお前らふたりを連れてきた黄鬼どん知っとるやろ」 「はい、あの方は、私たちが三途の川で溺れていた時に助けてくれた命の恩人です」 「どんな命かわからんけど、まあええわ。黄鬼どんが、お前らみたいなジゴク行きの人間を連れて来るさかい、その時に、この門を開けたらええだけや」 「でも、この姿では、すぐに人間だとわかってしまいますけど」 「心配せんでもええ。すぐに変えたるわ」  赤鬼と青鬼は、右手で自分の顔の皮を引き剥がすと、今度は、左手でサラリーマンと放浪者の顔の皮を引き剥がし、それぞれの顔に貼り付けた。 「痛、いた、いたたたたった」  あまりの苦痛に顔を抑えてしゃがみこむ人間ふたり。 「まだ、ジゴクの中に入ってもいないのに、もう、お仕置きですか」  泣きながら鬼たちに訴える。 「心配あらへん、もう、すんだで。痛みは一瞬や。もう、大丈夫や」  自分たちの顔をゆっくりと触れるふたり。 「そこの水溜りで、自分たちの顔をみてみいや」  鬼の言葉に促され、水溜りに顔をつきだす。 「あっ、鬼や、鬼や、赤鬼と青鬼や」  お互いを指差しながら叫ぶ。 「そんなに、驚かんでもええで。これからジゴクはもっと驚くことばかりや。あっはっはっは」 「さあ、次は、服を着替えよか。その背広とずた袋みたいな服とわしらのパンツと交換や」
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