第1章

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「極楽へ行く奴は、そんなにちょっとの数でっか」 「よう聞いてくれた、赤鬼どん。そんだけ、最近は悪いことする奴がようけ増えたちゅうことや。それとも、ええことする奴がおらんようになったことだけのことかも知れん。まあ、どっちにしろ、連れて行くのが、ようけの人数でも、少ない人数でも、給料が一緒では、割が合わんわ。近頃、耳にする能力給制度や実績主義やないけど、もうちょっと、仕事の量で判断して欲しいわ」 「ほんま、黄鬼どんは、よう働きますな」 「わしもそない思うとる。このままずっと働き続けたら過労死や。死んだもんの面倒を見る奴が、死んでしもうたら洒落にならんがな」 「気いつけなあきまへんで。自分の体は自分が一番知っとるさかい。疲れたら、休まなあきまへん。計画的に、年休はとらなあきまへんで」 「休みを取りとうても、わしの代わりの奴がおらんから、取らへんのや。こないに、ジゴクに来る奴が多いんやったら、ジゴクも週休二日にしてもらわな、わしの体が持たんがな」 「ほな、閻魔様に、提言を兼ねて手紙でも書きまっか」 「黄鬼どんと赤鬼どんの話に割り込むようやけど」  頭をひねりながら青鬼がしゃべる。 「なんや、青鬼どん」 「わしら、鬼たちは死んだらどこへ行くやろか」 「そんなん、極楽に決まってまっせ。青鬼どん」  赤鬼が胸をはって答える。 「そうかいな。わしら、ずっと生きとるさかい、あんまり死ぬこと考えてないけど、人間を懲らしめとるんには間違いないやろ。やっぱりジゴクと違うんかいな」 「何いうてますねん。わたしら悪いことをした人間を懲らしめとんでっせ。ええことしとんに間違いないですわ。それに、死んでジゴクに行くんやったら、今と同じや。死んだ意味があらしません」
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