第1章

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「そりゃそうやなあ。ほんでも死ぬことに意味があるんかいな」 「そりゃあ、あるんと違いまっか。死んだらすべてが終わりまっせ」 「そりゃ、生きとる時のことが終わるんだけで、死んだら死んだで、死んだ後の世界が待っとんと違うんか」 「なんや、頭がこんがらがってしまいそうですな。つまり、死んでも、ジゴクが待っとるということですか。ほんだら、わたしらまた、門番せなあきまへんな」 「何を訳のわからんこと言うてんのや、赤鬼どんに、青鬼どん。わしは忙しいから、早いとここいつらあんたらに預けて、また、船着場に戻らなあかんのや。さっさと、そのジゴクの門、開けてえなあ」 「すまん、すまん、黄鬼どん。今すぐ開けるさかい。なんや、その網にかかっとる人間たちは」 「こいつらか。さっき来る途中、わしが目を離し取ったら、船から三途の川に落ち込んだ奴らや。そのままにしといたら溺れてあの世に戻ってしまいよるさかい、急いで網で拾い上げたんや。網から出すんが、面倒くさいよって、そのままにしとんのや。ほんま、大変やで。船を漕ぎながら、人間救いもせなあかん。一人で何役もせなあかんのや。ほら、お前ら、さっさと、網から出んかい」  黄鬼が網を振り回すと、ふぎゃーと言いながら、生きていたときは救われなかった者たちが落ちてきた。 「ひい、ふう。みい、よう、九十八と、網から落ちてきた二人足して百。ほな、確かに、今回は、百人連れてきたよって、わしは電車に乗って船着場に戻るで。まだ、次から次へと人間が向こう岸で待っとるさかい。はよ戻らな、相棒の桃鬼どんに怒られるわ。ほな、後は任せたで、青鬼どんに、赤鬼どん。また、来るで、さいなら」
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