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宿舎からも離れ、そぞろ歩く。なかなか腰を落ち着けられそうな場所が見つからない。大人しく寝てしまうべきかと思い始めた頃――
「アルケイン、将軍…」
「やあ、君か」
月明かりの下、スチール製のガーデンテーブルで酒杯を傾けるアルケイン将軍を見つけた。
何故こんなところにガーデンテーブルセットがあるのかとか、何故将軍お一人でこんなとこにとか、色々思うところはあったが、微笑みを浮かべながら手招く将軍の側へと歩を進めた。
「ちょうどいいところに来たよ。付き合ってくれ」
独りで飲んでいたはずなのに、何故かあるもうひとつのグラスに手ずからワイン―戦利品である―を注ぎながら、同じテーブルにつくよう促してくる。将軍と席を同じくするのは畏れ多いのだが、この場の独特な雰囲気に呑まれ素直に着席してしまった。
「とってもいいワインが手に入ったから嬉しくてね。さあ遠慮せず」
「い、いただきます」
深い紅色のワインはとてもよい薫りがした。
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