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ゆっくりと車が動き出す。
……今日でこの家にはお別れだと言うのに、不思議と悲しさは無かった。
……あれ以来、私は何か大事な感情というものを忘れてしまったのかもしれないな、なんて考える。
信号で車が止まった時、唐突に美香叔母さんが口を開く。
「ごめんね、小春。私がこんな仕事じゃなければ貴方とずっと暮らすことが出来るのに……」
「いいんです、むしろ2ヶ月も住まわせてもらってすみません。ありがとうございました」
そう、私はこれからまた次の居候先へと向かっているのだ。
私の親が亡くなったのは、2ヶ月ちょっと前。
それから何軒か親戚の家を点々としたが、いろいろあった。
そんな時に現れてくれたのが、美香叔母さんだった。
「それに、こんな仕事だなんて言わないでください。叔母さんの写真は、見る人を元気に出来るんです。……私も、元気をもらいました」
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