これから、

4/24
前へ
/54ページ
次へ
叔母さんは世界を駆け回って色んな写真を撮るカメラマン。 本当なら今日までの2ヶ月間だって、日本にずっと居るのは難しかったはずだ。 それなのに、心配するなと言って 叔母さんは私と毎日いてくれた。 その間、色んな国の色んな写真も見せてもらった。 キラキラとした海や、雪の積もった山、楽しそうに笑う人々を見ていると、自然と口元が緩んだのを覚えている。 「ねえ、小春。私は自分の意志で貴方と過ごしたいと思ったの。だからね、これから行く人が嫌な奴だったらいつでも言って来なさい。叔母さん、貴方のためだったら仕事なんていつでもやめてやるから」 「……っ」 何か言おうと思ったけど、その時信号が青に変わり また車は前に進んで行く。 知らなかった。叔母さんがそこまで私のことを考えていてくれたなんて。 でも、だからこそこれ以上甘える訳にはいかないとも思った。 「……叔母さん、ありがとうございます」 私はやっとの思いでそう呟いた。 叔母さんは聞こえていたのだろうか。 横目で覗くと、少しさみしそうに笑う叔母さんの横顔が見えた。
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加