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ふふっという声がしてふっと顔をあげれば、何故だか嬉しそうな顔をしている。
「…?何かおかしいですか」
「いえ?ですが……初めて工藤さんと、呼んでもらえたので」
嬉しくてつい、と彼が続けた。
「あ……」
確かにそうだと思った。
今まで貴方と呼んでいたから。
なんでもないことなのに、気恥ずかしいような気がして、また顔を逸らす。
「工藤さんもいいですが、出来れば暁月と呼んでもらえますか?」
「あかつき……?」
何故?と言うのが顔に出ていたのだろう。工藤さんはなおも続けた。
「私の下の名前です。小春さんにはそう呼んで欲しいのですが」
ここで私は、工藤さんの一人称が“私”であることに気がついた。
「あかつき…さん」
小さくつぶやく。
「暁月、で結構ですよ」
「でも、年上なのに……」
「私たちはこれから一緒に暮らすんです。そんなの無しにしましょう」
そう言われれば言葉に詰まる。
ここの主は彼だ。
「あかつき……暁月」
さっきよりも少しだけ大きな声で呼んでみる。
「はい」
工藤さ……暁月は、さっきまでのどこか胡散臭いと感じていた笑みとは別の嬉しそうな顔で笑って答えた。
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