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ようやく、二人きり・・。
ドクンとまた心臓が音を立てる。
「じゃあ、私の知ってるお店でいいですか?」
柏木の顔を覗き込み、目を合わせると
「はい。どこでも付いていきます」
ニコリと笑って、頷いた。
柏木に、嫌われてはいないと思う。
好感を持ってくれているのではないかとも思う。
だけど、だからといって、
今日ホテルで私と一晩過ごすなんて、
全く考えてないだろうと思う。
次のバーまで、歩く間、
私は柏木との距離を少しだけ縮めた。
ほんの少し手を動かせば、触れる距離。
私の歩幅に合わせてくれる歩き方にも優しさを感じた。
二人で入ったのは、表通りから一本はいったところにある、
カウンター席とテーブル席が数席のそれほど大きくないショットバー。
「おしゃれなところですね。よく来るんですか?」
丸いテーブル席の方に二人で並んで腰をかけた。
「久しぶりに来たかな。
最近は、仕事が終わるとまっすぐ家に帰って
寝たいって思っちゃうから。
もう若い頃みたいに、飲み歩いたりとか、全然・・」
言いながらハッとした。
素を出すつもりは、なかったっけ。
もっと妖麗な惑わす女を演じなくちゃ・・。
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