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ちらっと堂本を見ると、
またしても声に出さずフっと意味深な笑顔。
仕方ない・・。
「堂本くんも、このあと時間があれば、一緒にいかない?」
堂本も誘った。
当然のように、柏木も『ぜひどうぞ』といった視線を堂本に送っている。
本当、柏木は裏表の
ないまっすぐな男なのね。
フゥっと息を吐き出すと、
堂本の返事を待った。
堂本はニヤリとしたまま私の顔を伺って言う。
「ぜひご一緒したいところですが、
実は今、呼び出されちゃいまして」
とケータイを手に持つ。
その視線は、そらすことなく私を見てて、
心を丸裸にされて、覗かれているような気がして、ゾッとした。
それでも、必死で冷静を装いながら言った。
「また、女の子?」
「まぁね。すごく残念ですが、お二人でどうぞ」
女に呼び出されたのは本当かどうかわからないけど、
気を使って、二人にしてくれてる・・気もする。
「遊びもほどほどにね」
と私が堂本に言うと、
堂本はニコッと特上の笑顔で私の耳元に顔を寄せて
「課長も、がんばって」
柏木に聞こえないような小さな声で囁いてから、
「じゃあ俺、こっちですから」
と何事もなかったように
私と柏木を残して横の道を曲がっていった。
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