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「後藤くんは、何に逃げてるわけ・・?あの日・・」
私が言い終わる前に、口を挟む。
「あの日は、、空腹だな」
大真面目に言う姿に、
思わず、プッっと吹き出してしまった。
後藤類の前で初めて笑ったかもしれない。
笑ったからかな。
ずっと頑なだった後藤類の印象が
変わった。
「そんなに、お金無いんだ・・。
ここに逃げてきたって、
空腹が満たされるわけじゃないのに」
立ち去る気もなくなって向かい合うと、
手を掴まれているのが不自然で、
慌ててパッと手を振り払う。
「あ。悪ぃ・・」
後藤類も、もう私の腕をつかむことはせずに、
ゆっくりとした動作で、一歩下がって
もう一度ベンチに腰をかけた。
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