MISSION 2-(2)

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「不思議と、イライラがおさまるからな・・」 座り心地を確かめるように、ゆったりと座って、 穏やかに言う姿は、やっぱり『王子』だ。 「そうなんだよね。ここ」 その気持ちはすごくよく分かる。 うんうん。と大きく頷いて、 私ももう一度ベンチに腰をかけた。 そのまま、しばらくお互い何もしゃべらない静かな時間が過ぎた。 乾いた枯葉が擦れる、風の音。 遠くに聞こえる学生の話し声。 沈黙が心地いい。 「でもやっぱり『逃げ』じゃなくて、ヒーリングだよ。癒し。 だからイライラも収まるし、気持ちも落ち着くの。 何かの原因で、逃げてきたのかもしれないけど、 ここで癒されることは、悪いことじゃない」 好きなんだもん。ここ。 逃げ場が好きだとは思いたくない。 後藤類は何も言わなかった。
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