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婚約を発表して以来、
さりげなく私と距離を置くようになった享。
でも、人目も気になるのか、大げさに避けることはなかった。
だけど、あの日以来、
こんなふうに近づいてきて話をしたことはなかったのに・・。
「帰るよ。もう」
メモはポケットの中に突っ込んで、
慌てて帰る準備を始めた。
「山下くんは?」
享を避けて、目も合わせず、
早口で社交辞令のように聞く。
「俺も今日はもう終わったし、
帰ろうかと思ってるけど・・。
久しぶりに、メシ食いに行かない?」
「は?」
耳を疑ってしまった。
たしかに、付き合い始める前も仲は良かった。
だけどあんなことがあった後だ。
「同期として」
強調するように言うけれども、
ただの同期にはもう戻れないってこと、
わかんないの?
「何言ってんのよ。婚約者が待ってるんでしょ?」
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