722人が本棚に入れています
本棚に追加
ガサリ。
あの日と同じように枯葉を踏む音。
誰かが近づいてきたのは、振り向かなくても分かる。
時間はちょうど6時。
「ちゃんといた・・」
ぼそっとそうつぶやく声が聞こえたので、
私は、ゆっくりと後ろを振り返った。
案の定、後藤類が、ベンチに向かって歩いてきているところ。
『王子』と呼ばれるだけあって、
目元はキリっとしていて、すーっと鼻筋が通っていて、
背も高い。
肌に毛穴なんて見当たらないほどキレイで色白。
だけど、少し猫背で、歩き方に力強さがない。
『王子』って言っても凛々しい王子ではないわね・・。
「タカハラさんって、
バカがつくくらいお人好しだな」
ベンチの左端に座っている私。
右側から回り込んで私の横に来た後藤類は、
まっすぐ私の方を見下ろしながら、サラっとそう言った。
最初のコメントを投稿しよう!