397人が本棚に入れています
本棚に追加
/245ページ
十月も終わりに差しかかった、秋、晴天の日。
車に揺られながら紅葉目当てにドライブ――
(なら良かったんだけどな……)
俺は榊さんが運転する車の助手席で、
うつらうつらと途切れそうになる意識をギリギリで保っていた。
「眠いなら寝ていっても構わないんだぞ」
ハンドルを握りながら
気遣いの言葉を投げかけてくれる榊さんには
有り難く思うが…。
「運転してくれている人の横で寝るなんてできませんよ」
「変なところで気を遣うな。朝、早かったんだろう?」
「それは榊さんもでしょ。俺がそっちの店行くって言ったのにわざわざ迎えにまで来て……」
「久し振りだったから、早く会いたかったんだ」
「っ……」
この人は、
恥じらいも無くこういうことをサラッと言う。
その度に焦らされるこっちの身にもなってもらいたいものだ。
最初のコメントを投稿しよう!