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自分の足元を見れば、ストッキングのつま先が伝線していた。
「みっともな…」
ハイヒールを履いて、懸命に自分を鼓舞して、虚勢を張って、必死で。
こんな風に、人から見えない所に惨めな綻びを隠して。
だけど、それでも良かった。仕事が好きだったから。
けれど、仕事女は煙たがられる。男にも女にも。
「あ~あぁ…」
溜息と共にしゃがんだまま見上げれば、茜色と紫色が混ざり合った夕焼け空。
もうすぐ、定時だ。
前田は、悲劇のヒロインぶりながらも、きっと、定時で帰るはず。あいつはそういう女だ。
「ちっきしょ…」
あんな女に、女として見下されるなんて。
泣きたい気分だけど、やはり泣けない。
前田のように、感情を露わにして泣けない。
年齢のせいか。性格のせいか。
世間一般で言うところの、私は可愛げない女ってことだ。
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