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その直後、大きな手が私の肩を掴んでいた。
「-ッ!?」
何が起こったのか解らず、咄嗟に身を縮こまらせたが、よく見ると、岸谷が隣に移動していて、後ろから私の肩にがっちり手を回していたのだ。
「な、何して…」
「壊してやる」
耳元で囁かれた言葉に、心臓がドクンと大きく跳ねた。
息が苦しい。
あの夜を思い出すとダメ。
私が私じゃなくなるから。
「や、め…」
声が出ない。
何かに祈るように、震える自分の両手を握り締める。
あの夜の支配者が、再び私に忍び寄ってくる。
あの夜の記憶が、彼に支配される歓びを覚えている。
「やっぱり、いいな。その顔」
私の顎に手をかけて顔を上げさせ、岸谷が目を細めて、妖しく微笑んだ。
ダメだ…!
ダメだ!ダメだ!!ダメだ!!!
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