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「私は…!」
岸谷を力いっぱい押して、自分の身を後ろに引く。
その拍子にガタリと片足だけ椅子から擦り落ちた。
私は構わず、半分立ったような体勢で続けた。
「あの夜の事は、もう忘れたの!」
岸谷の眉間の皺が深くなる。
だけど、それに怯んでは負けだ。
「私にとって、あんたはあくまでも仕事相手」
こいつの言う通りになんかなるもんか!
ここで岸谷を突っぱねなければ、今後の仕事にも影響してしまう。
私は睨みつけるように、座ったままの岸谷を見下ろす。
「私には仕事が一番なの…!それしかないの!だから、私の邪魔をしないで!」
力いっぱい握り締めた手が痛い。
みっともないくらい必死。
だって、仕事がなくなったら、私には何もない。
変わりたくても変われない。
いや、結局、このままがいいってことだ。
壊されたくない…!
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