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岸谷は黙ったまま、私をじっと見上げていた。 彼に見つめられるとすべてを見透かされそうで、視線を逸らす。 「帰る」 これ以上、ここにいたくない。 私は立ち上がった。 一口しか飲まなかったスクリュードライバーはそのまま。 勿体ないけれど、一気飲みはしなかった。 会計を済ませている間も岸谷は何のアクションを起こさず、あの夜とは違い、私はすんなりと店を出ることが出来た。 駅へと歩きながら、ホッとしたような寂しいような、複雑な心境に苛まれる。 「あぁ~あ…何、やってんだか…ハアー…」 何ともなしに呟いた独り言。 見上げれば、今日は満月。 満ち満ちた月は、私には眩し過ぎる。 どうしてだろう… 何で、こんなに、何かが足りないと感じるんだろう… ・
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