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「おい!」
「きゃっ!」
突然掴まれた左腕。
弾かれたように後ろを振り返る。
「勝手に一人で帰るなよ」
ハアハアと荒い息で、岸谷が私の腕を掴んでいた。
「だって、話は終わったでしょ」
私はブンと腕を振り、彼の手を振りほどいた。
「終わってねーよ!」
眉を顰め、岸谷は憮然とした態度で、私に手を突き出した。
手の中には、1万円札。
「何よ、これ」
「返す」
「はあ?お金なんて貸してないけど」
私も眉間に皺を寄せ、不快感を表す。
「お前がホテルに置いて行った金だよ」
「あッ!」
岸谷の説明で、そのお金の正体がやっとわかる。
「俺は『売り』なんて趣味じゃねーし」
「売り!?」
「金だけ置いて帰りゃ、そういうつもりだったってことだろ?」
その言葉に衝撃を受ける。
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