2190人が本棚に入れています
本棚に追加
「バカ!違うわよ!ホテル代に決まってるでしょ!?」
差し出された岸谷の手を払い、睨み返した。
「いらねー」
「私だっていらないわよ!」
「女に奢ってもらう主義じゃない」
「私だって年下に奢ってもらう主義じゃない!!」
一歩も引かない男と女。
喧嘩腰で言い合う二人を、行き交う人々が物珍しそうに見ては通り過ぎる。
目の前に差し出された1万円が、私のプライドをことごとく打ち砕く。
悔しい…!
寂しさから、この男を買ったって!?
悔しい!悔しい!!悔しい!!!
「あんたは…私がそんな女だと思ったわけだ…」
惨めだ。とてつもなく情けない。
「ハハ…何で、あんたみたいな男と……」
泣きたい。だけど、泣けない。
「くっそ…!」
いつもの口癖が零れ出る。
私の人生は、いつも悔しさに塗れている。
・
最初のコメントを投稿しよう!