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「…そんなこと言われても、困る」
かろうじて出た声。
だけど、震えて、説得力に欠ける。
岸谷の手を自分の手から無理やり剥がし、彼との距離と取った。
「仕事は仕事。それは俺も同じだ。お前の邪魔をしようなんて思ってない」
強い口調の彼に、弱腰になりそうな自分を奮い立たせる。
「だったら、仕事以外で私に構わないで…!」
岸谷がどういうつもりか、全く解らない。
一度、関係があるからって、私達にそれ以上の進展はありえない。
だって、こんな年下と付き合ったって、捨てられるのは目に見えている。
体だけの関係なんて、結局は自分が虚しくなるだけだ。
それなら、荒木課長と付き合う方が、ずっと、ずっと、現実的だ。
「お前、ほんとに仕事が一番なんだな…」
冷めた声色で呟いた岸谷。
いつもそうやって、男は仕事する女を卑下するんだ。
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